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「アトランティカ」開発者インタビュー,戦闘そして経済,ゲーム内に全世界を再現したい(アトランティカ)







 ネクソンジャパンが現在オープンβテストを行っているMMORPG「アトランティカ」は,韓国NDOORSが開発したゲームだ。NDOORSといえば,日本においては「君主 online」の開発元として知られているが,現実世界に基づいた緻密な経済システムを,ゲーム内にうまく盛り込むことを得意とするデベロッパとして知られている。



 今回は,「アトランティカ」のオープンβテストが開始されることを機に,NDOORSの開発本部理事である金 泰坤(Kim Tai Gon)氏が来日。さっそく,本作のユニークなシステムの数々や,NDOORSのDNAを強く感じさせる経済システムなどの特徴について,話を聞いてきた。





経済基盤をMMORPGへ盛り込むことに長けたNDOORSの最新作





NDOORS開発本部理事 金泰坤(Kim Tai Gon)氏




4Gamer:

 本日はよろしくお願いします。Kimさんは「アトランティカ」に関して,現在どのようなお仕事をされているのでしょうか。



Kim Tai Gon氏(以下,Kim氏):

 私はプロデューサーとして,全部で150人ほどがいるスタッフに対して全体的な方向性を指示したり,スケジュールを調整したりしています。いわばチーム全体の総監督のような業務ですね。



4Gamer:

 韓国ではすでにサービスが行われ,日本でもまもなくオープンβテストが始まりますが(注:インタビュー時点では),現在の開発作業は順調に進んでいますか?



Kim氏:

 開発状況については非常に満足しています。アトランティカには従来のオンラインゲームにはない要素が多いため,ユーザーに受け入れられるかどうか,最初は不安でした。しかし,こういったオリジナリティの部分が受け入れられたのか,韓国だけでなくアメリカなどでも高い評価をいただいています。



4Gamer:

 私も軽くクローズドβテストでプレイさせてもらいましたが,確かにユニークなゲームシステムが数多くありつつ,それでいてプレイしやすいという印象を受けました。








Kim氏:

 私達はアトランティカを作る際に,なるべくほかのタイトルとは違う,オリジナリティのあるものを目指してきました。そのように言ってくださるのは嬉しいですね。



4Gamer:

 NDOORSが以前にリリースした「君主」も,あの当時としてはかなりオリジナリティのあるゲームでした。NDOORSの開発チームは,開発時になにか特別に気をつけていることなどはありますか?



Kim氏:

 私は常々,現実世界のように人々が暮らしたりしている姿を,ゲーム内で再現したいと思っています。かつて「君主」を開発した際は,経済の動きや資本主義をゲーム内で表現しましたが,アトランティカではそれに加え,傭兵システムなどを搭載し,より幅広いプレイヤー層へアプローチすることを考えながら作っています。







コンシューマRPGっぽさを感じさせる"エンカウント/ターン制"のバトルシステム









4Gamer:

 日本で,この記事を機に新たに興味を持つ人のために,アトランティカの魅力をあらためて教えていただけますか。



Kim氏:

 このゲームでは,プレイヤーはアトランティス大陸にいた民族の子孫という設定で,世界各地の遺跡などを旅しながら,自分のアイデンティティを探していくことが主な目的となります。

 ゲーム内の世界には,現実世界に実在する地理や人物などが数多く登場しますが,一般的なMMORPGにおけるファンタジーらしさも取り込んでいます。世界観に関しては,"ファンタジー+歴史物"といえば伝わりやすいかもしれません。



 続いてアトランティカの大きな特徴として挙げられるのは,エンカウント方式+ターン制を採用した戦闘システムです。それによりプレイヤーは一人だけで戦うのでなく,傭兵を雇うことで,最大9人のキャラクターをコントロールできるのです。

 また,生産システムもかなり重要視しており,ゆくゆくは資本主義に則ったさまざまな経済システムの実現も,プレイヤーにとって大きな醍醐味となるでしょう。



4Gamer:

 まずはバトルシステムから順にお伺いしていきますが,最大で9名ものキャラクターを操れるというのは,かなり大きな規模ですね。








Kim氏:

 基本的にMMORPGというのは,一人のヒーローを育成していくゲームですよね。しかしアトランティカでは,プレイヤーキャラクターのほかに8名の傭兵を同時に操り,しかも"傭兵保管所"に10名まで預けることができます。それにより,最大で19名ものキャラクターを育成できるんです。

 彼らをレベルアップさせたり,スキルを習得させたりして育てるのはもちろん,合成や別のプレイヤーとの取引によって装備品を調達するなど,先程申し上げた経済システムの要素も大きく関わってきます。19名という人数規模だけでなく,育成のシステムもかなりのボリュームがありますよ。



4Gamer:

 そのようにして自分で育成した傭兵キャラクターを,ほかのプレイヤーと取引するといったことはできるのでしょうか?



Kim氏:

 それだと人身売買みたいになってしまいますね。傭兵というのはモノではなく,プレイヤーの同僚という位置付けですので,現在のところそういう方向性は考えていません。



4Gamer:

 続いて,エンカウントやターン制のバトルシステムに関しては,日本のコンシューマRPGに近い雰囲気があるなと感じました。こういったシステムを導入した経緯について教えてください。








Kim氏:

 私自身,日本のコンシューマ用RPGが大好きですし,それらからの影響がまったくないとは言い切れないでしょうね。

 このバトルシステムを導入した大きな理由として,最近のゲームはアクション性が必要以上に要求されるなど,新規に始める人にとっては難しく,遊びにくい部分が目立っているというのがあります。MMORPGの本質ってなんだろう? と考えると,ネットワークを通じてほかのプレイヤーとコミュニティを作り,楽しい時間を共有することでしょう。決して難しくすることではないですよね。しかし現状として,残念な方向に向かいつつあるように見受けられます。



4Gamer:

 なるほど。



Kim氏:

 そこで私達は,これらの流れとは逆の道を進んでみようと思い,手軽でとっつきやすく,そして戦略性で勝負できるゲームとして,アトランティカを開発しました。

 開発時にもう一つ注意したのは,現在の多くのタイトルはパーティプレイに寄り過ぎていて,一度ゲームを始めるとかなり長時間,プレイヤーが拘束されてしまうことです。言い換えると,ソロプレイが難しくなりつつあるということでもあり,そこで,例えばコンシューマゲームのように一人でも簡単にプレイできるようなゲームを目標にしました。



4Gamer:

 アトランティカのエンカウント/ターン制のバトルシステムは,韓国ではどう受け止められているのでしょうか。








Kim氏:

 ほかに似ているタイトルがほとんどないということもあり,最初はユーザーにどのように受け止められるか心配でした。しかし,私達が期待する以上に広く受け入れられたようでほっとしています。



 これらの反響を見て気付いたのは,既存のマンネリ化したゲームに不満を持っている人が,実際にはかなり多かったということです。そういったストレスを感じている人達にとっては,アトランティカが新たなジャンルへチャレンジしてくれたことをとくに歓迎してくれているようですね。

 また,若い人達がこのゲームに新鮮さを感じている一方で,長年コンシューマ用のRPGをプレイしているようなプレイヤー層にとっては,ああいったバトルシステムをオンラインゲーム上で実現したことに,懐かしさを感じられているようです。

 ネットカフェでアトランティカをプレイしていると,珍しいシステムなので周りに人がぞろぞろ集まってくる,というような話も多く聞きます。コアなゲーマーだけでなく,一般の人にも広く興味を持ってもらえているのは嬉しいですね。



4Gamer:

 なかなか興味深い話ですね。韓国では,いわゆるクリックタイプのゲームのアピール力が,次第に落ちてきているということなのでしょうか?








Kim氏:

 何年も前にリリースされ,現在まで長期にわたって人気を維持しているようなタイトルは,クリックタイプのゲームシステムが多いです。一度ゲームにプレイヤーが根付いたら,そのコミュニティからなかなか離れないものですし,それを振り切ってまで新しいものに挑戦しようという人は,あまり多くはないでしょう。

 そのような人気タイトルは,長年におよぶアップデートにより,さまざまなコンテンツが追加されているわけで,新しいゲームが新たに認められるようになるには,相当な労力を必要とします。

 しかしここ2~3年の韓国のオンラインゲーム市場を見ていると,少なくとも新作のタイトルで,そういったクリックタイプのゲームジャンルが人気を博したことはほとんどありませんね。



4Gamer:

 つまり,既存のタイトルにどっぷりと漬かっている人達を別に考えれば,現在の韓国市場では新たなゲーム性が強く求められている,ということなんですね。



Kim氏:

 ええ,韓国の多くの開発者にとっても,このままじゃいけないという気持ちが強く,新しいタイプのゲームを作ることに対してかなり意欲的になってきているように見受けられます。

 とはいえ新しいシステムというのは,未経験者に理解させることが難しいという意味で,リスクも抱えています。なので大切なのは,意欲的な要素とそうでない要素を,しっかり区別することです。アトランティカでは,大体80%位は従来の慣れ親しんだシステムを踏襲し,残りの20%に新しい要素を入れていくというバランスで作っています。



4Gamer:

 20%ですか? 私がクローズドβテストをプレイした限りでは,もう少し多いように感じましたが。



Kim氏:

 まぁ,開発者の感覚とプレイヤーの感覚とはまた少し違いますからね。私達から見て,80%くらいはユーザーが慣れ親しんだシステムにしないと,拒否感を与えてしまうのです。開発チームはよく,このバランスをどの程度に調整すべきかで議論していますね。

 もっと意欲的なシステムを盛り込みたいという気持ちは山々なんですが,新しいものを入れるには,拒否感を与えない程度にしなくてはなりません。例えば,先ほど,現実世界とファンタジーを合わせた世界観についてお話ししましたが,あれは,それほど奇をてらったものではありませんよね。








4Gamer:

 個人的には,アトランティカで意欲的なシステムが多いのは高く評価しています。とくにナビゲーションシステムは,初心者にとってもすごく便利だと思いました。



Kim氏:

 自動移動システムもかなり好評ですね。戦闘がターン制のシステムということで,プレイヤーにとっていろいろと考えることが多くなります。せめてそれ以外のところでは楽にさせようということで,移動に関しては半ば自動化させてみました。

 純粋に効率面だけを考えたら,ワープで瞬時に飛んでいくのがいちばん早いのですけど,それだとせっかく作り込んだ世界のグラフィックスを見てもらえないので,キャラクターを目的地まで走らせることにしました。移動中の時間を利用してプレイヤー同士のコミュニケーションを取りやすくするなど,細かいところでもいろいろと工夫していますよ。

 韓国では,ほかのゲームに一度流れても,移動が面倒という理由で再びアトランティカに戻ってきてしまう人もいるようです。



4Gamer:

 グラフィックスについてお聞きしたいのですが,オリエンタルさとファンタジーさが融合した世界観になっていますよね。これらには,どのようなコンセプトやこだわりがありますか?








Kim氏:

 ゲームの中に世界全体を取り込みたいというのが基本コンセプトとしてあります。単純に見た目を変えるだけでなく,文化圏を含めたものをゲームの中に再現していきます。

 ダンジョンに出現するモンスターや,キャラクターの装備品などのアイテムも,それぞれの地域によって大きく異なってきます。こういったグラフィックスの違いを,旅をするような感覚で楽しんでもらえると嬉しいです。



 オリエンタル色が強いと感じられたのは,きっと,ゲームの序盤が東洋を舞台にしているからでしょうね。ゲームが進展するにつれ,今後はヨーロッパやアメリカなども出てきます。それらの土地では,それぞれの風土に見合ったイメージのものとなるわけで,印象も違ってくると思いますよ。



4Gamer:

 今後のアップデートでは,どのような地域が実装されるのでしょうか?



Kim氏:

 現在開発しているのは北米地域ですね。19世紀の産業革命時期の文化をモチーフとしており,例えば西部開拓にちなんだ都市や,グランドキャニオンなどの名所も登場します。このあたりまで到達する頃には,アトランティカが世界中のさまざまな風土を取り入れているのだと,実感していただけるはずです。





エンカウント制のバトルを利用して,味方や敵への乱入プレイも可能




4Gamer:

 バトルシステムについてもう少し詳しくお伺いします。戦術的なゲームプレイを実現しているとのことですが,具体的にどのようなことが可能なのでしょうか。



Kim氏:

 戦闘時は敵味方の各キャラクターがいる場所がマス目で表示されますが,使用する武器によって攻撃できる範囲が違ってきます。例えば,剣であれば単体の敵にしか攻撃できませんが,槍だと縦2列,銃だと3列まで同時に攻撃できます。また弓であれば敵の場所に関係なく攻撃できますし,斧だったら対象の横方向にいる敵にも同時に攻撃ができます。もちろんそれ以外にも,傭兵ごとに習得できるスキルが違ったり,武具をコーディネートしたりと育成パターンは非常に多いですね。

 そして全部で18人いる傭兵の中から,出てくるモンスターなどの状況に合わせて,どの8人を選択するかという戦術要素も戦局を大きく左右することになるでしょう。








4Gamer:

 18人がいる傭兵の中から8人を選ぶとのことですが,いつでも入れ替えは行えるのでしょうか?



Kim氏:

 ええ,メンバーの入れ替えは,戦闘中を含めていつでも可能です。18人というのは多いと感じられるかもしれませんが,ゲームの序盤では仲間にできる傭兵の種類が少なく,クエストなどで段階的に増えていくようになっていますので,初心者でも戸惑うことはないと思います。



4Gamer:

 アトランティカは最大で3人のプレイヤーがパーティを組めるわけで,つまり9×3=27体もの味方キャラクターが戦闘画面に現れます。27人のキャラクターがモンスターと戦うという光景は,いったいどういった雰囲気になるのでしょうか。



Kim氏:

 実際には敵もパーティを組みますので,最大で27対27,54体のキャラクターによるバトルが展開されます。これはほかのタイトルでいうと,大規模なギルド戦に近いといえるでしょう。

 アトランティカはターン制のバトルということで,戦闘時に長時間が掛かると思われるかもしれませんが,敵と味方のそれぞれ単位で制限時間が設けられているため,たとえ人数が多くてもそれほど時間が掛からないようになっています。各プレイヤーが個人で戦うか,それとも仲間と力を合わせて戦うかなどといった選択も,パーティプレイにおける戦略性の一つとなるでしょう。



4Gamer:

 パーティプレイに特化したスキルや,戦術などといったものはありますか?



Kim氏:

 ええ。仲間にかける補助魔法や,連携によってはじめて可能となるコンボ技のようなスキルがあります。また,例えば,3人編成のパーティ内で,強いプレイヤーが2人でメインで戦いながら,残りの一人が戦利品の収集を専門に動く,といった役割分担も可能です。



4Gamer:

 アトランティカはエンカウント形式のバトルですが,ひとたび戦闘モードに突入すると,関係ないプレイヤーからの視点からはどのように見えるのでしょうか?



Kim氏:

 その場合は,戦闘中であることを示すマークが表示されますね。



4Gamer:

 では例えば,それを見たパーティ外のプレイヤーが,戦闘に加勢を行えたりはできますか?



Kim氏:

 ええ,できますよ。ただ,そういったヘルプを望まないプレイヤーもいますので,加勢できるのは相手が同じギルドだったり,友達だったりといった制限があります。



4Gamer:

 エンカウントバトルであるため,てっきり戦闘中はほかのプレイヤーと遮断されてしまうのかなと思ったのですが,違うんですね。MMORPGらしいシステムだと思います。








Kim氏:

 エンカウントバトルによってプレイヤー間が遮断されてしまうのは,開発当初からの懸念の一つでした。その境界をまったくなくすというのは無理がありますが,ある程度まで緩和することができないものかと思い,ずっと努力を続けてきました。

 あとから援軍を受け入れてしまうと,一度の戦闘時間がどんどん膨れ上がってしまいがちなのですが,サクサクと進められないと中だるみしてしまうため,ここの部分はとくに苦労しましたね。現在の戦闘時間は,たとえどんなに規模が大きくなっても,最長で3分となっています。



4Gamer:

 ふと思ったのですが,プレイヤーとモンスターとが戦っている最中に,別のプレイヤーが"モンスター側に"加勢ということはできたりしますか?



Kim氏:

 実は,それが可能なんです。すべてのプレイヤーに対して可能なわけではなく,プレイヤー同士が敵対関係にある場合に限られますが。



4Gamer:

 それっていわゆるPKやMPKに近い行為ですよね。仮にモンスターと戦闘している最中に,まったく別のプレイヤーが敵側の援軍として登場したら,かなりアツそうです(笑)。



Kim氏:

 まぁ,PKという見方もできます。もし敵が援軍を呼んだら,こちらも急いでギルドメンバーなどのヘルプをお願いしないといけないでしょうね(笑)。





ギルドによる都市支配も可能。経済を基盤にしたNDOORSらしいコンテンツ




4Gamer:

 この乱入システムは,ギルドバトル(GvG)などにも応用させられそうですね。GvGの方向性については,なにか考えはありますか?



Kim氏:

 "ギルド"という単位での戦争はないんです。ですが,ギルドよりもさらに大きい規模,すなわち"国家"という単位でのバトルを検討しています。国家戦に参戦している敵対プレイヤー同士であれば,いま申し上げたような乱入システムが可能になりますね。



4Gamer:

 アトランティカにおける国家とは,どのような構成になっているのですか?



Kim氏:

 国家というのは,複数のギルドによる連合体です。国家が特定の地域を物理的に支配していたりといったことはなく,あくまでもイメージ的なものです。



4Gamer:

 マップ内には,東京やソウルなどを初めとした"都市"がいくつかありますが,国家はこれらとの直接的な関係はないんですね。ちなみに都市は,どういった役割を担っているのでしょうか?



Kim氏:

 アトランティカのワールドマップの中には,合計で58か所の都市があります。これらの都市はプレイヤー同士の取引をはじめとした,コミュニティの中心地という役割を担っています。そしてアトランティカの大きな特徴として,特定のギルドが都市を支配することも可能です。

 ギルドが支配している都市では,税率を自由に設定したり,経済機能にちなんだ建物を建てたりすることができます。そうして都市が発展することで人口が増加し,NPCのショップが増えるなど,プレイヤーにとっての冒険時の利便性も大きく高まったりもします。



4Gamer:

 なんというか……。Kimさんがかつて「君主」の開発者であったことを,強く感じさせるシステムですね(笑)。








Kim氏:

 えぇ,私自身も,こういった経済システムをゲームに反映させることが大好きなんです。でもアトランティカにおける現在の都市の運営システムは,まだまだ初期段階といえるもので,もっともっと多くの構想がありますよ。

 アトランティカでは,ゲームの序盤から中盤にかけては,プレイヤーは傭兵などの戦闘システムに重点的に関わっていきます。しかし中盤以降になると,自分達がどのようにして都市に携わっていくか,というのが最大のポイントとなってくるでしょう。開発サイドにとっても,ゆくゆくはこれがメインコンテンツになるだろう,との認識があります。



4Gamer:

 ギルドはどのようなプロセスを経て,都市の支配権を獲得するのでしょうか?



Kim氏:

 主な方法としては,"ギルド製造"や"ギルドクエスト"を行うことで,"ギルドポイント"なるものを獲得していきます。そしてギルドポイントを用いて都市に入札を行い,無事に落札できると都市の支配権を獲得するという流れです。

 またギルドポイントに関しては,自分で入札する以外にも,オークションシステムを通じてほかのギルドと取引といったことも行えます。



4Gamer:

 話を聞いていてなんだか,君主のシステムがとても懐かしく思えてきます。

 ギルドポイントを使っての都市運営に,プレイヤーは実質的にどれくらいのレベルから携わることができるのでしょうか?



Kim氏:

 都市の数が限られているということもあり,仮に支配する側に回ろうと思ったら,かなりのハイレベルプレイヤー向けとなるでしょうね。



4Gamer:

 韓国のプレイヤー達に,これらの都市運営システムはどのように受け止められていますか?



Kim氏:

 韓国のサーバーでは現在,600前後のギルドが設立されています。

 一般的なオンラインRPGにおける魅力とは,自分のキャラクターを育てる楽しさが中心にあります。でもアトランティカの場合はそれに加え,傭兵達を育てる楽しさと,都市を運営する楽しさもあるんです。これらをひっくるめて形成されるコミュニティは,韓国のプレイヤーにとってもかなり好評だと受け止めていますよ。



4Gamer:

 新興ギルドにとっては,たとえ自分達で都市を直接支配できなくても,ギルドポイントを売ることでお金を稼ぎ,ステップアップできるというところがとくにいいですね。



Kim氏:

 ほかの多くのMMORPGだと,強力なギルドとそうでないギルドの格差が,延々と広がってしまいがちです。しかしアトランティカでは,上位のギルドから下位のギルドへお金が流れていくシステムがあり,このあたりの完成度は自信を持っていますね。



4Gamer:

 全部で58の都市があるとのことですが,地域によってダンジョンなどに出現するモンスターのレベル帯が違います。都市機能に関して,これらの地域の違いがなんらかの影響をおよぼしたりはしますか?



Kim氏:

 都市機能に関しては,どの地域にあってもパラメータ面における違いはありません。アジアよりもアメリカの都市のほうが,支配するのは難しいけど大きなメリットを得られる,といったこともありません。




本格的に経済を取り入れた「君主 online」




4Gamer:

 今日こうやって話を聞いていると,「君主」で表現しきれなかったことを,このアトランティカで行いたいという気持ちが伝わってくる気がしました。



Kim氏:

 私達NDOORSにとって「君主」は特別なタイトルですし,あの経験があったからこそ,今もこうしてゲームの開発に携わることができています。また,前に携わったタイトルでよいところがあれば,その一部を次に反映させるのはごく自然な流れだと思います。とはいえ,まったく同じことを繰り返すだけでなく,常に新しい要素を取り込んで進歩させていきたいです。



4Gamer:

 ええ。アトランティカには新しい部分もとても多いですよね。

 これから日本ではオープンβテストが始まるわけですが,最後にプレイヤーに向けてのコメントをお願いします。



Kim氏:

 アトランティカは,ワールドワイドで受け入れられるタイトルを目指し開発してきました。もちろんその中には日本も含まれており,エンカウント式のターン制バトルなど,日本のユーザーを意識したゲームシステムを数多く実装しています。

 これですべてのプレイヤーに受け入れられる,といい切れるほどの自信はありません。ですが,もし既存のゲームに不満や退屈さを感じている方がいたら,ぜひアトランティカのオープンβテストに触れてみてください。きっと気に入ってもらえると思います。



4Gamer:

 本日はありがとうございました。





 個人的にアトランティカのクローズドβテストを軽くプレイした段階では,コンシューマ文化の根強い日本のプレイヤー層にとって親和性が高そうだなぁ,というくらいの印象であった。



 だが今回のインタビューにて,Kim氏の話が都市運営のプランにおよぶと,その構想の大きさに思わずゾクゾクしてしまった。なぜならば,これらの話は決して夢物語などではなく,過去に「君主」で成しえてきた事実の上に成り立っているということを実感できるからである。

 ちなみに「君主」は2Dグラフィックスということもあり,第一印象でのインパクトは決して強いとはいえない。だが,国家運営に代表される経済システムの数々は,現在のMMORPGジャンルでもいまだに突出しており,実際に遊べば印象ががらりと変わるタイトルの代表例だとも思っている。

 それらの優れた経済システムが,3Dグラフィックスをはじめとした最先端の技術でどのように発揮されるのかは,アトランティカにおける最大の見所の一つといえそうだ。



 もっとも,アトランティカにはそれ以外の魅力もたくさんある。エンカウントやターン制のバトルシステム,そして傭兵システムなど,既存のMMORPGとは大分違った印象を受けるはず。これらのユニークなシステムが,日本のプレイヤーにどのように受け止められるのか実に興味深い。

 この記事を見て興味を持った読者は,ぜひオープンβテストに参加して,その出来栄えを直接確かめてみてほしい。



(2008年10月21日収録)

by hatlantica | 2011-11-13 15:32 | atlantica RMT